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磯崎新 アートプラザ(旧大分県立図書館)

設計部の上本です。
盛夏に大分市に行く機会があり、大分出身の巨匠、磯崎新氏の建築を見て帰ろうと思い大分市中心部にあるアートプラザを訪ねました。

アートプラザ(以下、旧大分県立図書館)は、大分県立図書館として1966年に建設され、日本建築学会賞を受賞。
その後図書館の移設に伴い、市がアートプラザとして再生し、磯崎氏の初期代表作として多くの人々が訪れている建築です

造形的でダイナミックな建築の全容は、カメラの画角に収まりきれず、こちらの全景は大分県のHPからお借りしました。
正方形断面の中空梁、巨大なペアウォール、スキップフロアを多用した巧みな空間構成…といった特徴が解説されています。

旧大分県立図書館の構想において、磯崎氏は「プロセス・プランニング論」を用い、その方法論を確立させたと言われています。

プロセス・プランニングとは
「時間的な推移の各断面が、常にその次の段階に移行するプロセスであると考える方法」…

大変難しい言い回しで私の頭では理解できなかったので、色々な方がプロセス・プランニングについて書いたり語ったりされているものを読みました。

磯崎氏の言葉に
「最終的な形ではなく、計画課程自体に焦点を当てたプランニング」
とあり、完成形ではなく、対象が変化するものとして計画、設計することと読み取れます。

蔵書の増加や機能の更新が予想される図書館建築の構想において、プロセス・プランニングはふさわしく、こうした深く緻密な思考、プロセスによって生まれた建築が保存運動によってアートプラザとして再生し活用されていることが本当に貴重だと思いました。

全景写真で空に突き出している中空梁は、その断面意匠でプロセス・プランニング論の「成長」の切断が造形として表現されているとのことです。

現在3階は、磯崎新建築展示室として、中央の吹抜けに面したいくつもの小部屋をめぐるスキップフロアの展示空間となっています。
氏の年表や膨大な資料が年代ごとに展示されているその小空間は、図書館時代にはテーマを設けた蔵書の紹介コーナーだったのでは?廊下から掘りこまれたポケットスペースは落ち着いて読書ができそう、などと想像が広がります。
空間のシークエンスとともに、ここに経過した時の流れと氏の理論を体感できる、この建築そのものが磯崎新であると感じました。

「プロセス・プランニング論」(鹿島出版会、1997、『空間へ 根源へと遡行する思考』)
建築の計画概念には3つの段階がある。
クローズド・プランニング(閉ざされた建築)、オープン・プランニング(開かれた建築)、プロセス・プランニング(プロセスの建築)。